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番外編 それでも俺は姐さんとともに生きていく
「ねぇ未知、いつも思うんだけど、根岸さんと伊澤さんって仲いいよね」
肩を並べてエレベーターへと向かった二人を見送ったあと、ナオさんが独り言のようにボソッと呟いた。
「朝から晩まで常に一緒。彼から聞いたんだけど、根岸さんの家に伊澤さんが居候しているんでしょう。絶対にあやしいよ」
「そうかな?根岸さん、一太くらいの孫がいるんだよ」
「未知ってそういうのには鈍感だよね。Pコートも中に着ているスーツもお揃いなんだよ。肩を寄せあって一緒に煙草をふかしたり、あと、缶コーヒーも半分残っているなら寄越せって伊澤さんが飲んでるのを根岸さんが横取りしたりして。伊澤さんは怒るところかむしろ喜んでいたし。それだけじゃないよ。あんまり吸うと体に良くないって、甲斐甲斐しく世話を焼いていたし、亜優、毎日一緒にいてヘンだって思わない?」
言葉が通じないから当然亜優さんは話を振られてもきょとんとするしかなくて。
「ダンディーなおじ様カップルもあり得る。ね、未知」
「まぁ、当人同士の問題だし。温かく見守ってあげよう」
「うん、だね」
あれほど塞ぎ込んでいたナオさんが明るい表情を見せてくれた。元気になって良かった。
そう安心したのも束の間、今度はどこから嗅ぎ付けたのかテレビ局の車が病院の前に横付けされ、カメラを肩に担いだ男性が車から下りてきた。
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