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番外編 それでも俺は姐さんとともに生きていく

その男性はちらちらと辺りを見回して誰かを探しているようだった。 白目も見えるほどに目を見開き、戦闘態勢に入るかのように肩や首を回しながら、フーさんとウーさんが僕たちの前にすっと立った。二人ともかなり怒っているみたいだった。 「ナオさん、大丈夫?」 「うん」 不安でいっぱいなのだろう。短く何度か呼吸を繰り返し平静を保とうとしていた。 「収賄容疑で巷を騒がせている大物代議士がこの病院に検査入院したらしい。顔を見てたまげた。野暮ったい黒縁眼鏡を外したら古狸に瓜二つ。体形までそっくりだ」 伊澤さんが戻ってきてくれた。 「未知さんが擦れ違った女とやけに親しげにひそひそ話しをしていた。ナオと同じ病棟ってのがちいと気になるがな。ナオ、厄介事に巻き込まれる前にさっさと退院した方が良さそうだ。俺もナオと一緒でマスコミが大っ嫌いなんだ。にしても、あのカメラマン、どっかで見たことがあるんだよな」 目を皿のようにして男を凝視する伊澤さん。 「老眼だからよく見えねぇ。こういうとき根岸がいればいいのにな」 そんなことをぶつぶつ独り言を言っていた。 ナオさんの言う通り、伊澤さんと根岸さんは本当に仲がいい。 騒ぎを聞き付け駆け付けた二人の警備員が、カメラを担いだ男性を何とか追い出そうとしていたけど、頑として動こうとせず。しまいには患者さんやその家族の前で小競り合いの喧嘩をはじめた。

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