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番外編 それでも俺は姐さんとともに生きる

伊澤さんがなにかを思い出したみたいでスマホを操作し始めた。 「そうだ。目がつり目で、右目の下に泣き黒子があり、左の耳の下にも黒子がある男だ。悪いが至急調べてくれ」 わずかな手がかりから犯罪の匂いを嗅ぎとる野生並みの嗅覚をもつ伊澤さん。現役時代より一切衰えていない。 蜂谷さんと国井さんにそれぞれ連絡をしたみたいだった。 「未知さん、千里にも聞いてくれないか?」 「あ、はい」 ポケットからスマホを取り出した。 『あら~未知?久し振りね。元気だった?』 いつもとなんら変わらないテンション高めの声に、ほっと気持ちが落ち着く。 『分かったわ。すぐに調べるからちょっと待ってて。あ、そうだわ。写メ撮れる?』 「はい」 座ったままだと遠すぎて顔が上手く撮れなくて。立ち上がろうとしたら、ウーさんが代わりに写真を撮ってくれた。 『ねぇ、未知。出産が近付いてくると心配ごとや不安なことが増えて情緒不安定になる妊婦もいるって聞いて、アタシね、未知のことが心配で電話をしようと思っていたのよ。子どもたちのことは遥琉やお兄ちゃんに任せて、くれぐれも無理しないようにね』 「ありがとう千里さん」 「あら~~やぁね。湿っぽい話しになっちゃったわね。伊澤ちゃんいる?」 「あ、はい。もしかしてもう分かったんですか?」 さすが千里さん。仕事が早い。

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