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番外編 それでも俺は姐さんとともに生きていく

「そうか、やっぱりな」 伊澤さんが納得したように大きく頷いた。 「未知さん、ほらあそこにATMが見えるだろう?そこを真っ直ぐ進むと通用口があるから、そこから外に出ろ。すぐ隣にあるスーパーで卯月の迎えが来るまで、なるべく人が多いところにいろ。その方が安全だ」 「伊澤さん、誰なんですか?」 「殺人容疑で全国に指名手配されている男だ。九鬼総業のトラブルメーカーだった。楮山組が匿っているのではないか、そう千里は見ていたらしい。あのカメラマンがもしソイツで間違いないなら、楮山組がすぐ近くにいるはずだ。金の亡者共め。諦めが悪い連中だ」 伊澤さんが、フーさんとウーさんに、未知さんを守ってやってくれ。そう言って頭を下げた。 「亜優は、俺とナオを守る。いいな」 現役時代を彷彿とさせる伊澤さんの凛々しい姿に、亜優さんは驚いたように目を丸くしていた。 そうか聞いてないものね。驚くのも無理ない。伊澤さんも鞠家さんも元刑事さんなんだよ。しかも、僕たちやくざを取り締まるマル暴の刑事さんだったんだよ。 伊澤さんと亜優さんに付き添われナオさんが男に注意しながらそろりそろりと忍び足で受付のすぐ近くにあるエスカレーターへと向かった。 3人と別れ、フーさんとウーさんと一緒に伊澤さんに言われた通りATMを目指し移動をはじめた。

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