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番外編 それでも俺は姐さんとともに生きる

「誰かと思ったら若頭の弓削さんか。地竜の飼い犬に食われてすっかり腑抜けになったと聞いていたが元気そうじゃないか」 弓削さんを見下し鼻でせせら笑った。 「上田さんの方こそ元気で何よりだ。にしても、楮山組の連中はどんだけ暇なんだか」 怒気を帯びた口調で言い返すと負けじと睨み付けた。 「悪かったな暇で」 苛立ち熱したように低い早口で吐き捨てると、 「興ざめした。お前ら一旦引くぞ」 二人の男に声を掛けると、ポケットに右手を突っ込み、弓削さんの肩にわざとぶつかるように擦れ違った。 「今回の猿芝居の絵図を描いたのはお前か?無関係な人を巻き込んで、他所のシマで好き勝手してんじゃねぇぞ」 怒りに声を震わせる弓削さんをチラリと横目で見ると挑発するようにニヤリと笑った。 どんなにバカにされようが、卑下されようが弓削さんは男の挑発に乗ることはなかった。 鼻息も荒く息巻くヤスさんを宥めながら、 「あ、そうだ。すっかり言い忘れていたが、若頭は引退した。俺みたいな半端者より遥かに有能な男が若頭に就任するぞ。おぃ上田、楮山共々首洗って待ってろ!」緊張した面持ちで声を張り上げた。

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