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番外編 大切なひとを守るための再出発と、決意

「オヤジ、姐さんお帰りなさい」 車から下りると若い衆が九の字に腰を曲げ総出で出迎えてくれた。これが日常の光景なんだけど、いまだに慣れない。 「遥琉」鞠家さんが駆け寄ってきて彼の耳になにかを伝えた。 「そうか来たのか。分かった」 ふたりで並んで歩き出した。 「マー」 ウーさんが両手に抱えていた紙袋を上に上げた。 「これお土産。みんなで食べて」 「姐さん、ありがとうございます」 若い衆に渡すとみんな喜んでくれた。 彼が甘党だからかな?若い衆も甘党のひとが多い。人数分買ってきたつもりだけど、間に合うかな?もし足りなかったらそのときは、ごめんなさいって謝ろう。 「お帰りなさい」若い衆に玄関を開けてもらい中に入ると蜂谷さんが正座して出迎えてくれたから腰を抜かすくらい驚いた。 「なんで蜂谷さんがここに?」 「未知、いや、姐さんと呼ぶべきだな。菱沼組にしばらく厄介になることになった」 「えっ?」 すぐには理解することができなくて。 ぽか~んとしてしまった。 「蜂谷は最後まで真面目に勤め上げた。浅井らに何を言われても我慢し、形見の狭い想いをしながら、よく耐えた。たいしたもんだ。未知にちゃんと挨拶をしたいとずっと待っていたんだ」 「そうなんですか?ごめんなさい」 彼に言われて慌てて頭を下げた。

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