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番外編 誓う
噂をすれば影で伊澤さんが亜優さんを伴い帰ってきた。
「ん?」何でみんなで俺を見るんだ?まだ何もしてないぞ。伊澤さんが不思議そうに首を傾げた。
「それはそうと、えっと、何だっけ?丸くて甘いの・・・・・お、そうだ、ドーナツだ。亜優がさっきからそればっか気にして」
フーさんとウーさんから聞いたのかな?
「亜優さんの分も伊澤さんの分もちゃんと取ってあります。台所に置いてあるのであとで食べてください」
「お、そうか。ありがとうな未知。あとでじゃなくて、今、食べてくる。俺ら、なんかお呼びじゃないみたいだから。亜優、行くぞ。吃饭 、食事だ」
手招きすると亜優さんがにっこり笑って、伊澤さんの後ろを小走りで付いていった。
「孫とお祖父ちゃんだな」
「まさにその通りだ。言葉は通じなくても、何かと面倒をみてくれる伊澤のあとをまるで金魚の糞みたくくっついて歩いているんだ。見てて微笑ましいよ」
根岸さんの表情がふっと和らいだ。
彼を含めた幹部の皆さんの話し合いで人事が内定した。GW明けの5月7日から正式に人事が刷新されることになった。
「若頭は鞠家。若頭補佐は縣。本部長は柚原。本部長補佐はここにはいないヤスとフーにつとめてもらう。ヤスは長年弓削の舎弟をつとめただでさえ纏まりのない若い衆をまとめてきた。面倒見もいい。信頼もある。フーは将来見込みがある男だ。二人ともまだまだ青二才だが、いずれこの組を背負って立つようになるだろう。弓削には退院後、未知の弾よけになってもらう。根岸と伊澤さんには、度会さんと共に相談役をしてもらう」
彼の言葉にみんな耳を傾け、異論なし。一様に大きく頷いた。
その直後、思いがけない人が姿を現したものだから、場が一瞬だけ静まり返った。
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