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番外編 誓う

「大人しく入院していろって言ったはずだ」 彼が苛立ち熱して早口で呟いた。 「俺の病院嫌いはオヤジが一番分かってるはずです。医者の治療よりも姐さんの側にいた方が早く治る」 「あのな・・・・・」 悪びれる様子もなくしれっとして答えた弓削さんにさすがの彼も返す言葉が見つからなかったみたいだった。 「弓削さん、クスリが体から完全に抜けるまでどんな禁断症状が起こるか分からないんですよ。それ分かってますか?」 弓削さんのあとを追い掛けてきた橘さんが偉い剣幕で食ってかかった。 「未知さんや子どもたちを守るどころか逆に危害を加えないか、私が心配しているのはそこです」 「そう目くじらを立てるな。可愛い顔が台無しだ。だからヤスやウーに頼んだんだろう。その時は遠慮せず俺を刺せって。一思いに殺してくれってな。姐さんの弾よけになる夢が叶ったんだ。いつ死んでも思い残すことはない」 「あなたという人は」 言葉をなくし絶句する橘さんに対し弓削さんは怖いくらい落ち着いていた。 「体内に芫の置き土産がまだ残っているんだ。これがある限り、俺は芫の呪縛からは逃げられない。下手したら一生ヤツの飼い犬だろうな」 右手の甲に目を落とし微かに自嘲した。

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