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番外編 誓う
お昼ごはんはままたん特製のサンドイッチ。ムシャムシャと手掴みであっという間に完食し、空の皿を右手で持ち上げ「全部食べたよ」と満面の笑みでアピールする太惺と心望。
「歩くところを見たかった」
そんなふたりを見ながら彼ががっくりと肩を落としていた。
あのあと、話し合いもそっちのけでふたりのところに駆け付けた彼。立っちさせて手を離し、自分の方へあんよさせようとしていたら、
「たいくんもここちゃんもマイペースに日々成長中です。ふたりのペースに合わせ、焦らずそっと見守ってあげる。なぜそれがあなたには出来ないんですか?」
割烹着姿でお玉を握り締めた橘さんが音もなく現れ、すぐに二人に駆け寄った。
「だって遥香のときも初めてのあんよ、俺だけ見れなかったんだぞ」
「それはいなかったあなたが悪い」
「本部の大事な会合をどうしても欠席する出来なかったんだ。それにしても少し過保護過ぎないか?」
「は?何か言いましたか?」
橘さんの眉がピクピクと動いた。
「いえなにも言ってません。独り言です」
どう頑張っても口では橘さんに敵わない彼。しゅんとして項垂れていた。
そんな二人のやり取りを弓削さんは笑いを堪えて眺めていた。
ーパパ、でんわだよ。でんわだよー
スマホの着信音にも気付かないなんて。よっぽど凹んでいるみたいだった。
「遥琉さん、電話」
軽く肩を揺すると、
「悪い」
はっとして我に返り、慌ててスマホを耳にあてていた。
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