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番外編 誓う

「あ?」驚いたように目を見張りながら席を立った彼に、 「悪いが、バナナプリン俺の分取っといてくれ」小声で頼まれた。 太惺と心望に「パパ~、あ~ん」と食べさせてもらったバナナプリンがよほど美味しかったみたいで、それ以降橘さんに頼み余分に作ってもらっている。ほんのりと甘い優しい味のバナナプリンは、紗智さんや那和さんも大好きで残った一つを巡りじゃん拳がはじまるくらいだ。 「遥琉さんどうしたの?」 「よく分からないが、千里がテレビを見ろって言ってるんだ」 切羽詰まった声に嫌な予感がした。 「楮山が動いたか、もしくは黒竜が動いたか、どっちかだろう」 「抗争……またはじまるのかな?もう嫌だよ。誰かがまた傷付くの。もう見たくない」 「未知・・・・・・」 ぎくっとして彼の足が止まった。 「俺だって誰も傷付けたくはない。大切な家族、仲間、友人、組の連中ーーみんなを守りたい。だから、今出来ることを精一杯やるだけだ」 落ち着いた、低い調子の声に彼のなみなみならぬ決意を感じた。 「絶対に無理しないでね」 止めても無駄。彼は、一度決めたことはなにがなんでも最後までやり通すひとだもの。 「おぅ、ありがとうな」 にっこりと微笑むとテレビが置かれてある広間へと急いで向かった。 廊下で立ち話しをしていた鞠家さん、柚原さん、蜂谷さんが彼のあとを慌てて追った。 いままでそうしていたように彼に付いていこうとした弓削さん。でも二、三歩歩いたところで立ち止まりすぐに戻ってきた。

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