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番外編 誓う
「ほら、紗智。たいくんとここちゃんが心配するから」
鞠家さんに言われ涙を手でごしごしと拭いながら紗智さんが顔を上げると、ハイハイで逃げてきた太惺と心望が瞬きもせず、じっーと不思議そうに首を傾げ紗智さんを見上げていた。
どーじょ。ふたりしてほぼ同時に立っちし小さなお手手に握り締めていたタオルを差し出した。 引き摺ってハイハイしていたから汚れているんだけど。
でも紗智さんは前に屈むと、
「ありがとう」
にっこりと微笑みながら受け取り、バンバイして抱っこをねだる心望を抱き上げてくれた。
ふたりの優しさに感極まったのか、また泣き出してしまった。
「たいくん、ここちゃんありがとうな」
鞠家さんも涙声になりながらも太惺を抱き上げてくれた。
「たく、泣くことでもあるまい」
「そうですね」
遅れて姿を見せた柚原さんと橘さんがやれやれとため息をついていた。
「柚原さんはあくまで若頭代行です。若頭はあなたしか出来ません。ですから、紗智さんとここであなたの帰りを待ってますから、くれぐれも気を付けて」
橘さんのその言葉に、鞠家さんの表情が自然と引き締まった。
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