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番外編 誓う

うとうとしながらも、子どもたちのことが心配でなかなか眠ることが出来なかった。 30分ほど過ぎると、泣き声がぴたりと止み、ふっと部屋の中が静かになった。 「俺が風邪をもらってやる。熱も怠さも全部寄越せ。だから、早く良くなってくれ」 囁くような声が聞こえ、唇に温かく柔らかなものが触れた。 そっと押し当てられただけのような、掠めていっただけのような温かなもの。 次の瞬間、それが彼の唇だと理解した僕は一気に真っ赤になった。 「あ・・・・・」 驚きのあまり、声も出なかった。 心配そうに顔を覗き込まれ、頬がみるみるうちに熱くなっていく。 「しー。橘に見付かったら怒られるから」 小声で口にすると、唇の前に人差し指を立てた。 「未知のことだ。子どもたちが心配で寝れずにいると思って様子を見に来ただけだ。子どもたちのことは俺や柚原に任せて、とりあえず寝ろ」 「うん」 髪を撫でてくれて。 布団を掛け直してくれると、中に手を入れてきて、そっと手を握ってくれた。 その温もりに、胸の中まで温かくなった。 そろそろと握り返すと、温もりは一層広がっていくようだった。 陽葵もパパの温もりを感じているのかな。お腹を元気にぽこぽこと蹴ってくる。 彼の温かさを感じたまま、僕は静かに眠りについた。

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