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番外編 誓う

「ま~ま」 「まま」 太惺と心望の声が聞こえてきて、ぺたぺたと小さな手が額や頬や目蓋に触れてきた。熱で体が火照っているせいか冷たくて気持ちがいい。 「たいくん、ここちゃん、ママお熱があるから、ねんねさせてあげようね」 この声の主は紗智さんだ。 ゆっくりと瞼を開けると、顔の両隣にお座りしている太惺と心望と目が合った。ふたりして、なんでママねんねしてるの?不思議そうに首を傾げていた。 「マー、起こしてごめんね。なんでマーがここにいるのが分かったのか僕も不思議なんだ」 「多分ね、僕じゃなくて、ままたんとぱぱたんを探していたんだと思う」 「そっか、なるほど。ふたりして、ままたんとぱぱたんっ子だものね。それ分かる」 紗智さんが二人の頭を撫で撫でしてくれた。 「一太と遥香は?」 「小学校と幼稚園だよ。朝起きたら雪がうっすらと積もっていてふたりして大はしゃぎだったんだよ。一太くんはバーバと柚原さんが送っていった。ハルちゃんは僕と橘さんと那和で見送ったよ」 「ありがとう。鞠家さんがいなくて寂しいでしょう?」 「高行さんが若頭になったら側にいたくてもいれないもの。だから、いまから少しずつ慣れておかないと」 涙を振り切りはにかむような笑顔を見せてくれた。そんな紗智さんの膝の上によいしょ、よいしょと太惺と心望が競うように登っていった。 「こらこらふたりとも、紗智さんは一人しかいないんだから、仲良くね」 「そんなに柔じゃないから、大丈夫だよ。マー何か食べたいものある?」 いきなり聞かれて返答に困った。お腹はそれほど空いていない。でもーー、 今日も元気にお腹をポコポコと蹴ってくる陽葵のためにも何か食べないと。

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