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番外編 想う

「マー、電話じゃないの?」 紗智さんに言われて初めて気付いた。 「もしかして千里じゃない?」 太惺と心望にいたずらされないように枕の下隠しておいたスマホを取り出し画面を覗くと二人言う通り千里さんからだった。通話ボタンを押しスピーカーに切り換えた。 『ねぇちょっと酷くない?アタシに代わってくんないのよ』 「千里久し振り」 「あんまり怒るとお肌に悪いよ」 『あら~~紗智と那和も一緒なの?嬉しい~~!』 イライラしていた千里さんの声がぱぁーと一瞬で明るくなった。 「亜優もいるよ」 紗智さんが亜優さんに話し掛けた。 「コンバン」 『あら~~日本語、上手になったわね』 千里さんは相変わらずテンションか高い。 『未知、風邪どう?熱は?』 「喉も痛くないし咳も出ないし熱もたいしたことないの。みんな心配性で」 『しょうがないわよ。一人の体じゃないんだもの』 「ねぇ千里さん。答えたくないなら答えなくてもいいけど、梶山組との抗争がはじまるの?」 『話し合いで解決しようとしたけど無理ね。強硬派の上田が徹底抗戦の構えを崩していのよ。組を抜けようとした若い構成員がもう何人も上田に見付かって粛清されているわ。血も涙もない男よ。ウーに、何があっても命を張って女房を守れって命じたわ。紗智、那和、未知を頼むわね。アタシ動けないから』 笹原さんと二人の子どもたちは密かに本部を抜け出しいまは縣一家に匿われていること。 依然として意識不明の笹原さんのお父さんを別の病院に移したことを教えてくれた。 『なぁに大丈夫よ。梶山組に黒竜と古狸が付いているようにアタシには地竜が付いている。それだけじゃないわ。ファンクラブのみんなの協力もある。だから安心して』

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