1321 / 3283

番外編 千ちゃんLOVE

翌朝、甲崎さんが若い刑事さんを伴い訪ねてきた。 「みんな見てくれ」 上着を脱ぎ得意気な顔で白いTシャツを見せてくれた。 「なんと悪趣味な」 「どこが悪趣味なんだ。格好いいだろう?一致団結して俺たちの永遠のアイドル、愛しの千ちゃんを何がなんでも守り抜くって決めたんだ」 「そうですか」 彼がやれやれとため息をつきながら額に手を置いていた。 それもそのはず。背中にでかでかと書かれてあったのは【千ちゃんLOVE】。しかも千里さん本人のかな?キスマーク付き。 ということは斉木先生も同じTシャツを着ているのかな? 「相棒の沼尾だ。馬鹿が付くくらい真面目な男で、おやっさんの元部下だった男だ」 「沼尾です」 甲崎さんとは違いびしっと紺色のスーツに身を包んだ若い刑事さんが一歩前に出て、緊張した面持ちで深々と頭を下げた。 「おやっさんに会えると聞いて二つ返事で付いてきやがった」 「だって先輩、絵心がないから似顔絵を描けないでしょう?」 「分かっているならいちいち聞くな」 沼尾さんが辺りをキョロキョロと見回した。 「伊澤に来るように連絡しておく。妻はここ2日体調を崩している。無理をさせたくない。手短に頼む」 「分かりました」 沼尾さんが僕の前にすっと歩み寄ると、宜しくお願いしますと笑顔で挨拶してくれた。 彼や柚原さん度会さんらが見守るなか、甲崎さんと沼尾さんに病院で声を掛けてきた女性のことを話した。顔をはっきりと見たはずなのにいざというときに思い出すことが出来なくて。一緒にいたウーさんとフーさんに協力を頼んだ。

ともだちにシェアしよう!