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番外編 千ちゃんLOVE
「もしかしてまた盗聴器か?」
彼が眉を吊り上げ声を荒げた。
「俺の愛する妻の声を盗み聞きするとはいい度胸しているな」
安産のお守りをじろりと睨み付けた。
「いやそれとは何か違う」
沼尾さんが白手袋を嵌め、安産のお守りと亜優さんからもらったお守りをしばらく交互に間眺めたのち、おもむろに安産のお守りを解体しはじめた。
「国井のカミさんを呼んだほうがいいか?」
興味津々見ていた甲崎さんが声を掛けると、
「国井さんはあらかじめ連絡してあります。もうじき到着するはずです」
「お、そうか。さすがに手回しがいいな」
「連中の考えそうなことくらい分かります」
「さすがおやっさんの一番弟子」
「一番弟子は鞠家先輩と蜂谷先輩です。ふたりの足元には到底及びません。これは……」
沼尾さんの目の色が変わった。
彼とその手元を覗き込むと、ジッパー付きの小さな袋が出てきた。見るからに怪しそうな白い粉が入っていた。
「つまり連中の狙いは卯月の女房か?」
「鑑定してもらわないと分かりませんが、ほぼ間違いないと思います」
「嘘……」
あまりの衝撃的なことに一瞬凍り付いたように体が動かなくなってしまった。
「所持だけでも罪になるからな。くそ」
彼が悔しそうに唇を噛みしめ握り拳をわなわなと震わせながらテーブルをドンと強く叩いた。
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