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番外編 千ちゃんLOVE
「定年間近だったのに、ある日突然デカを辞め、そのまま消息不明。みんな、おやっさんのことを心配していたんですよ。風の便りで菱沼組で厄介になってる。根岸というダンナに面倒をみてもらっていると聞いて安心しました。おやっさんも水臭いですよ。ダンナがいるなら恥ずかしがらずにそう教えてくれればいいのに。恋をするのに年なんて関係ありません。甲崎さんは甲崎さんで、おやっさんの居場所を知っていた癖にわざと俺たちに教えてくれなかったし」
頬を少し膨らませ、チラッと甲崎さんを睨み付けた。
「悪気があった訳じゃねぇよ。そう目くじらを立てるな」
ゲラゲラと笑いながら沼尾さんの頭に生えた二本の角を手で撫で撫でしていた。
「沼尾、これは?」
茶封筒から何か細長い紙を取り出し、目を細めて眺める伊澤さん。
「老眼だから字が細かすぎて読めない。根岸、分かるか?」
伊澤さんから紙を渡された根岸さん。
一目見るなりぷぷと笑い出した。
「俺達に新婚旅行へ行ってこい、まぁそういうことだ」
「新婚……旅行?」
怪訝そうに眉をしかめる伊澤さん。
「オヤジと姐さんは新婚旅行がまだだ。それなのに俺達が先に行く訳にはいかないだろう。順番が違う。それに、まずはウーと若先生を一緒にさせるのが先だ。俺らはそのあとでいい」
「伊澤、いま何て言った?空耳か?聞き間違いか?」
思わず本音をぽろりと漏らした伊澤さんに、今度は根岸さんが慌てる番だった。
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