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番外編 千ちゃんLOVE

「……遥琉さん」 部屋に戻り子どもたちと一緒にお昼寝しているのかな。戻ろうとしたら、椅子の陰から微かな寝息の音が聞こえてきた。 慌てて目をやれば、背凭れに深く寄り掛かり眠っている彼の姿があった。疲れて寝てしまっただろう。 彼まで風邪をひかせる訳にはいかない。 一旦部屋に戻り、子どもたちと一緒にお昼寝している紗智さんと那和さんを起こさないように毛布を一枚押入れから引っ張り出し、それを持って書斎へと戻り、彼にそっと掛けてあげた。 整った男らしい顔には疲労が色濃く浮かんでいる。 それでもこうして眠っていると、心なしか僅かずつ固い表情も柔らかくなってゆく気がする。 じっと見入っていると、その瞼が微かに動き、音もなくゆっくりと上がった。 「未知か?」 声がしたと同時に、視線がふっと絡む。 次の瞬間、彼は自分が寝ていたことに気付いたみたいでぱっと身を起こした。 「眠っていたのか……毛布を持ってきてくれたんだ。お腹が重いのにありがとう」 「だって遥琉さんまで風邪をひいたら大変だから」 「橘にみっちり説教されるもんな。自己管理がなってないってな。未知、いま何時だ?」 「えっと」 机の上に置いてあったスマホの画面を覗き込んだ。 「あっ」 彼が声を上げた。 「裕貴と鞠家とすっかり話し込んでいて、遼成に電話を掛けるのをすっかり忘れていた。絶対怒られる」 彼がため息をつきながらスマホを耳にあてた。 なかなか繋がらないみたいで、一旦電話を切ると今度は真剣な眼差しで何やら入力をはじめた。

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