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番外編 千ちゃんLOVE

「ねぇハルくん。ダーリンが知り合いの刑事から聞いた話しなんだけど、黒竜が血眼になって翡翠を探しているらしいわよ」 「は?」 彼や回りにいた幹部のみんなの目付きがガラリと変わった。 「用済みだからゴミのように捨てたのにね。ほんと自分勝手よね」 「提供する臓器はもうない。俺の大事な息子を殺す気か?」 彼が声を荒げた。 「チカ、忠告しておく。あまり深入りするな。浅川みたく消されるぞ」 「それをいうならハルくんもでしょう。もうじき家族が増えるんだよ。お願いだから翡翠を地竜へ送り返してちょうだい」 「……翡翠は死んだ。ここにいるのは俺と未知の息子・亜優だ」 必死で懇願するチカちゃんをしばらくの間見つめたのち彼が静かに言葉を返した。 「遥香くらいの年で生き別れて、大人になってやっと兄弟と再会出来たんだぞ。それなのにまた引き離すのか?ここに来たときは構って貰いたくて、注目して貰いたくて悪戯ばかりしていた。それは今も変わらないが、未知を母親のように慕い、素直に甘えてくる亜優もなかなか可愛いもんだ。俺は亜優も紗智も那和も誰一人地竜に返す気はない。3人とも俺と未知の息子だ」 前を見据えきっぱりと言い切った彼の雄々しい姿を、柚原さんに通訳してもらいながら亜優さんが尊敬の眼差しで見詰めていた。 そしてどこからか押し殺すような泣き声が聞こえてきた。

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