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番外編 千ちゃんLOVE

「紗智まで泣いてどうするの」 「そういう那和だって泣いてる癖に」 「だってバーバが珍しく格好いいこと言うから」 ずずっと鼻を啜りながら紗智さんと那和さんがえへへと照れ笑いしながら、太惺と心望をそれぞれ抱っこし庭へと連れて行ってくれた。 「ハルくんは昔と全然変わらない」 チカちゃんがぷぷと思い出し笑いをした。 「未知や子どもたちを大切にしてあげてね」 「言われなくても分かってる」 面と向かって言われるのが恥ずかしいみたいでぷいっと慌てて顔を逸らした。 「パパ!チカちゃん!」 「あそぼ」 一太と遥香が笑顔でおいでおいでと手招きした。 「国井まで来たら収拾がつかなくなる。絶対に寄越すなよ。うちは旅館じゃねぇぞ」 電話を掛けてきた鞠家さんに捲し立てるように一方的に言うとすぐに電話を切り、 「夜泣きが始まる前に未知といちゃつくという大事な用があるんだ。邪魔するな」 ぶつぶつとぼやきながらマナーモードに切り替えた。 「鬼に見付かる前にと」 彼が胡座をかいて布団の上に座り直すと、膝の上を軽くぽんぽんと叩いた。 「本調子じゃないのに、我が儘を聞いてくれてありがとう」 言われた通り向かい合ってゆっくりと座るとおでこに彼のおでこがぺたんとくっ付いてきた。 「順調なんだろう?あ、そういえば逆子は直ったのか?」 「うん。あとねちゃんと顔見れたよ。南先生が予定日より少し早く生まれるかも知れないって」 「いつも恥ずかしがって腕かお尻しか見せてくれなかったからな。そっか良かったな」 ぎゅっとお腹を労るように広い胸に抱き寄せられた。温かくて心地良い。一番安心できる場所だ。

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