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番外編 千ちゃんLOVE
「その、キス、してもいいか?」
髪を撫でていた手が頬に下りてきて、そろそろと撫でられた。
間近から見つめられ、小さく頷くと、頬に触れていた指にそっと頤を掬われた。
ドキリと心臓が跳ねた次の瞬間、唇に温かなものが遠慮がちにそっと触れてきた。
「ん……っ」
身体の奥に火を灯されたように全身が熱くなり、一気に夢見心地に引き込まれた。
触れていた唇がちゅっと小さな音を立てて離れ、濡れた息を溢すと、鼻先の触れそうな距離で微笑まれた。
「未知の唇は熟れた果実みたいだな。甘くて、触れ心地がよくていい香りがする」
掠れた声で囁かれ頭がくらくらとしてきた。
彼の腕に身を委ねると、耳殻に再び熱い唇が触れてきた。
「ママいってきます!」
笑顔で手を振りながら玄関の戸を開けた時だった。
「オヤジ大変です!」
警備にあたっていた若い衆が息を切らし駆け込んできた。
「やっぱり来やがったか」
彼が鋭い眼差しを外に向けた。
「松尾は?」
「橘さんと一緒にデカと話ししてます」
「甲崎は?」
「まだ到着していません」
「そうか」
そこへチカちゃんが欠伸をしながら姿を現した。昨日とはうって変わって落ち着いた感じのベージュ色の丈の長いワンピースを着ていた。
「県警の皆さん、随分と早起きね。ハルくんの言う通り県警には鼠がもう一匹紛れ込んでいるかも知れないわね」
鑑定の結果がつい5分前に送信されてきたみたいだった。
「仲間がもうじきここに到着するわ。それまでの辛抱よ。未知は絶対に県警には渡さない。一太くん、外にはおっかない人たちが大勢いるから、危ないから柚原さんと裏口に向かおうか」
「は~い」
「根岸さん夫婦と亜優が待ってるわよ」
「は~い」
なんの疑いもなく素直に返事する一太。まだふたりは夫婦じゃないんだけど……。
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