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番外編 千ちゃんLOVE

男性がおもむろにスマホを耳にあてた。 「安斉、部下にどういう教育をしているんだ。躾がなってない。挨拶もろくに出来ていない。あの口の聞き方はなんだ?何様のつもりだ」 低い声で脅すようにゆっくりと話すとすぐに切った。 「きみが卯月未知か?」 目が合うなり、鋭い眼光でジロリと見下ろされた。 有無を云わさぬ威圧感が、男性の全身から放射されているようだった。 「ウーのおっかさんの腹にはややこがいる。クスリなんてやる訳ねぇべ。そう睨むな」 若先生が助け船を出してくれた。 「まさか乾と同じことを言われるとは思わなかったな。まぁ、いい」 男性が上着の内ポケットから何かを取り出した。 よく見るとそれは沼尾さんが描いた似顔絵だった。 「N地区の闇医者が日雇い労働者に風邪薬あるいは整腸剤だと偽りこれを処方していた。中身は違法ドラックだ。どうなるか予想はつくだろうよ。闇医者と手を組みボロ儲けしていた中国人の男に酷似している」 「大の大人に水に溶かして服用しろって普通言わねぇ。薬が苦手な小さい子供ならまだ分かる。実際水に入れるとしゃわしゅわってすぐ溶けるんだ。甘い柑橘類の香りがすっから誰もおっかねものだって疑わねぇべ」 男性は若先生に協力を仰いだ。 それが縁となり、今も定期的に連絡を取り合っているみたいだった。

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