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番外編 千ちゃんLOVE

「九鬼総業が解散する直前、多額の上納金を持ったまま男は行方をくらました。用済みになった闇医者を始末してな。女に見間違えるくらいの可愛い顔をして中身はとんでもない悪党だ」 悔しそうに顔を歪めながら似顔絵が描いてある紙を手で握り潰す男性。 「一時はなりを潜めていたんだが、パトロンの与党議員の政治資金を集めるため、また違法なクスリを売り捌きはじめた。要心深い男でなかなか尻尾を見せなかったんだが、ようやくこれで手がかりを掴める」 「ねぇはっちゃん」 チカちゃんが手を振った。 「誰だお前。馴れ馴れしく人の名前を呼ぶな」 「ちょっとそれ酷くない?アタシよ。乾千景よ」 「千景……?」 目をぱちぱちしチカちゃんの顔を食い入るようにじっと見つめる男性。まさか女性になっているとは予想外だったみたいでかなり驚いていた。 「国井と所帯を持ったと噂で聞いてはいたが、まさか本当に女になっていたとはな。チカにはいつも驚かされてばかりだ。昔のチカも可愛いかったが、今のチカはもっと可愛い」 「やぁだ~~もうはっちゃんたら、口が上手いんだから。ダーリンに焼きもち妬かれちゃう」 歯の浮くようなキザな台詞をさらりと口にする男性。 チカちゃんは耳まで真っ赤になって照れまくっていた。 「チカがだんだん千里に見えてきたんだが、気のせいか?」 「うん、気のせいだよ」 「そうか?そうは思えないんだけど」 彼もしまいには頭を抱え込んでいた。

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