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番外編 千ちゃんLOVE
それから数分後。
「オヤジ大変です」
息を切らし若い衆が駆け込んできた。
それまでにこやかに談笑しながらお茶を飲んでいた長谷部さんの目付きがガラリと変わった。
「なんだまたいたのか。随分と暇な連中だな。チカ行くぞ」
紫さんに「ご馳走さまでした」軽く頭を下げてからすっと静かに立ち上がった。
「卯月さんはここにいろ」
「未知もだよ」
一度は素直に引き上げたものの、すぐに踵を返し、必死で制止する若い衆を強引に振り切り県警の捜査員が玄関に雪崩れ込んできたみたいだった。
怒号が飛び交い、物々しい雰囲気がここまで伝わってくる。
「大阪にいるはずのお前がなんで福島にいるんだ?」
それまで横暴な態度をとっていた捜査員たちの態度が手のひらを返すようにころっと変わった。
「罪のない一般市民を守るためだ」
「あ?どこが一般市民だ」
「何か言ったか?」
「あぁ。どこがーー」
「おぃ、止めろ。相手はあの長谷川だ。勝ち目はない」
互いに一歩も引かず揉めるとにらんでいた彼だったけど、拍子抜けするくらいあっさりと捜査員の方が先に引き下がった。
「長谷川は仲間を助けるため、たった一人で九鬼総業のアジトに乗り込んだんだ。瀕死の重症を負いながらも、そこにいた連中を一網打尽にした。お巡りもたまげるすげえ男なんだ」
「そうなんですか」
「んだ。まさに愛に生きる伝説の男だ」
「愛ですか?」
「んだ。愛だ。ヤツほどの熱血漢はいねぇ」
男性の意外過ぎる過去を若先生が話しはじめた。
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