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番外編 若先生とウーさん
甲崎さんと沼尾さんは捜査協力の依頼を仰ぐため市内にある警察署に赴いている。
チカちゃんと長谷部さんも一緒だ。
いつまでいるんだよ。彼の怨み節が聞こえてきそうだ。検査入院している与党の議員が退院する前に証拠を集め、何としてでも逮捕にこぎつきたいみたいだった。
「雲行きが怪しい」
雲ひとつない青空を見上げ彼が呟いた。
「頭が相当キレるヤツなら、マトリが嗅ぎ回っていることに勘づいているはずだ。芫は弓削を取り戻すために必ず動く。もう一人の芫は亜優を捕まえるために必ず動く」
「亜優を捕まえるためなら手段は選ばない。なるほどな」
柚原さんがフーさんに声を掛け大急ぎで一太を迎えに行ってくれた。
彼とウーさんは幼稚園バスで帰ってくる遥香を迎えに行ってくれた。
「若先生、赤ちゃんの名前教えてもらってもいいですか?」
置いてきぼりを食らった若先生。
寂しそうに肩を落とししょんぼりとしていたから、ほっとくことが出来なくて思わず声を掛けた。
「太陽の【陽】に彩るの【彩】で"ひいろ"って呼ぶんだ」
「陽彩くんですか?すごくカッコいい名前ですね」
「たべ。3日寝ずに考えたんだぞ。俺とウーのヒーローになんだぞって願いを込めたんだ。めんけいから写真みっか?」
「いいんですか?」
スマホの写真のフォルダには数えきれないくらいたくさんの陽彩くんの写真が保存されてあった。生きるための無数のチューブの管に繋がれた陽彩くん。小さなお手手を動かし、保育器の中で懸命に生きていた。
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