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番外編 いつかこの想いが届きますように
その日の夜。
『そうか。まぁ、良かったんじゃねぇか。根岸も伊澤もそれで幸せなら。しかし、そっちは相変わらず盆と正月が一緒に来たように賑やかなだな』
チカちゃんたちの賑やかな声が漏れ聞こえていた。
お義父さんもてっきり千里さんがいると思ったみたいで。声がそっくりだから驚いていた。
「お義父さんはチカちゃんのこと知ってるんですか?」
『知ってるもなにも遥琉の交遊関係はだいだい把握するようにしていたからな』
「あの、お義父さん」
『根岸のことだろ?裕貴から未知が知りたがってるって聞いたからこうして電話をしたんだ。ヤクザになる理由は人それぞれだ。根岸には子供がふたりいる。うち長男は先天性の重い心臓病を患い心臓移植が必要だった。募金を呼び掛け渡米するのに必要な何億っていう金を集めたんだが、根岸のカミサンがその金を持ってとんずらした。まぁ結局男に騙されていたんだがな。長男はその直後容態が急変し亡くなった。ハルちゃんくらいの年だったんじゃないかな?根岸はまだ幼かった次男の手を引き、日本全国カミサンを探し歩いた。そのうち金が底をつき行き倒れたんだ。ちょうどそのときたまたま通り掛かったのが遥琉と、まぁ、俺の……』
そこで一旦止めるとわざとらしく咳払いした。
『今さら隠してもしょうがないじゃん。二号さんっていえば?』
心さんの声が聞こえてきた。
『まぁ、そういうことだ。根岸は賠償金を払うため、それに次男を育てるためヤクザになった。成長した次男はそんな父親を毛嫌いし、近畿かそこら辺の全寮制の高校へ進学したって聞いたんだが詳しいことまでは知らない』
「根岸さんにそんな過去があったんですね」
知らなかったこととはいえ、驚くことばかりだった。
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