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いつかこの想いが届きますように

「うねめ祭りにも行こう。メインイベントの踊り流し、久し振りにみんなで見たいな。弓削さんも見たいでしょう。みんなでお揃いの浴衣を仕立ててもらおう。今から準備すれば間に合うかも知れない」 電話の向こう側から啜り泣くような声が微かに聞こえてきた。 「弓削さん、ごめんなさい。肝心なときになにも出来なくて」 「そんなことはないですよ。未知さんの気持ちは弓削さんにちゃんと届いていますよ」 弓削さんを励ますつもりが、逆に橘さんに励まされてしまった。 「未知、余計なことに首を突っ込んでないよな?」 台所で洗い物をしていたら彼がむすっとして入ってきた。 「え?あ、うん」 いきなり図星をつかれドキリとした。 「弓削とデートするときは俺ももちろん付いていくからな」 「……」 もしかして全部聞かれていた?全身から血の気がさぁーと引いた。 腰に手が回ってきて。お腹を気遣いながら後ろからそっと抱き締められた。 「未知の浴衣姿も楽しみだ」 耳朶を甘噛みされ、熱を帯びた大人の色香が漂う眼差しで瞳をじっと見つめられた。 「水を出しっぱなしにしない。台所はいちゃつくところではありませんよ」 橘さんが心望を片腕で抱っこしたまま姿を現した。蛇口の水を止めると、冷蔵庫を開けキンキンに冷えた瓶ビールを取り出した。 「下心見え見えですよ。鼻の下が伸びてますよ。本当に困ったパパですね。あ、そうだ遥琉。乾さんが探していましたよ。仙台に戻る前に話しがあるそうです」 「おぅ、分かった」 続きはあとでな。橘さんに睨まれながらもチュッと軽く頬っぺにキスをしてくれた。

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