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番外編 いつかこの思いが届きますように

「どうした?」 淋しそうに親指の爪を噛んだ亜優さんに真っ先に気付いたのは根岸さんだった。 声を掛けられびくっと肩を震わせる亜優さん。無意識のうちに噛んだのだろう。血が微かに滲んだ親指を驚いたように見つめていた。 「柚原、通訳を頼む。亜優の誤解を解くのがまず先だ」 根岸さんが「おいで」と手招きした。 「オヤジと姐さん同様、ネギとイザも亜優が可愛くて仕方がない。息子みたいなもんだ。まぁ、怒ってばっかりいるからなぁ、嫌われてもしょうがねぇがな」 そこで一旦言葉を止めると自嘲した。 「いいか亜優、イザと付き合っても今まで通りだ。なにも変わらない。だからこれからも俺らの側にいてくれ。まだまだ教えることがやまのようにあるからな」 ふたりの間にちょこんと座った亜優さんが目を丸くして柚原さんに話し掛けた。 「淋しいならそうはっきり言えばいいんだ。亜優は一人じゃない。マーや紗智や那和がいるだろう。ネギとイザもいる」 「そうだぞ亜優。指を見せてみろ」 伊澤さんに言われおずおずと親指を差し出した。根岸さんがスーツの内ポケットから絆創膏を取り出すと、それを伊澤さんが受け取り亜優さんの親指にペタッと貼った。 「また傷が増えたな」 「なぁに若いんだ。すぐ治るさ」 ふたりして声を掛けながら亜優さんの髪をくしゃくしゃと撫でた。すると顔が喜びにきらきらと輝き出した。

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