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番外編 いつかこの思いが届きますように
温もりが伝わってくるのが嬉しい。
心臓がドキドキして今にも口から飛び出しそうになった。
そっと顔を上げるとすぐ間近に彼の顔があった。目が合うと、体奥に火が付いたかのように熱を感じた。
頬に彼の手が触れてきて。気付くとスイと頤を掬われ、彼の唇が唇に触れていた。
「愛してる……」
唇がそっと離れ、囁く吐息のような声と共に、さっきよりも深く口付けられた。
翌朝。
橘さんは柚原さんを伴い磐梯熱海温泉へと出掛けていった。
「どうせ門前払いだ。なぁに、心配せずともすぐに帰ってくる」
彼にはそう言われたけれど、お昼を過ぎても橘さんたちは帰ってこなかった。電話を掛けても電波が届かないか電源が切れてますとのメッセージが流れるだけで、何かあったんじゃないか、気が気じゃなくて。何度も玄関へ足を運んだ。
「未知大変だ」
組事務所に出掛けていた彼がスマホを耳にあてがいながら息を切らし帰ってきた。
「根岸の息子がいなくなった」
「根岸さんのお孫さんは?」
「夜中に起きたら布団がものけの空になっていたらしい。父親が帰ってくるかも知れないからと電気を付けて健気にも一晩中帰りを待っていたが結局帰ってこなかった。出勤してこないことに不審を抱いた女将が様子を見に行き、寮でひとりで泣いていた孫を発見し交番に連絡した。橘がサツに事情を説明し、根岸に迎えに来るように頼んだ。夕方までには帰ってくると思う」
彼の背後から亜優さんが姿を見せた。
「ネギとイザの足手まといになるからバーバとマーと待ってるって、ちゃんと言えたんだ。うんと褒めてやってくれ。亜優突っ立ってないで靴を脱いで家に入るぞ」
彼に手招きされ嬉しそうにはにかんだ。
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