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番外編 いつかこの思いが届きますように

「一太、遥香、根岸の孫をしばらくうちで預かることになった。面倒掛けるが、仲良く出来るか?」 「はい」 座り直しぴんと背筋を伸ばす一太。大きな声で返事をすると、 「はぁ~い」 遥香も一太の真似をして座り直すと右手を上げた。 「パパ、ねぎしさんよかったね」 「何がだ?」 「だってねぎしさん、いつかなかなおりしたいって。いちどでいいからあいたいってはなしをしていたんだよ」 「そうなのか」 彼も初耳だったみたいで、驚きの表情を見せた。 「いちた、なかよくするね」 「ハルちゃんもなかよくする」 「ふたりとも頼むぞ」 嬉しそうに笑いながらふたりの頭を撫でてくれた。 それから1時間後。 橘さんが一人で帰ってきた。 「あれ?一人か?柚原と根岸と根岸の孫は?」 「あとから来ます。根岸さんのお孫さんが、オレンジ色の太陽に向かって真っ直ぐ延びる飛行機雲を不思議そうに見上げて全く動こうとしないんですよ。すみません。語彙力がなくてどう表現していいか分かりません」 「そんなことない。だいたい分かったよ」 一太と遥香が手を繋ぎ、根岸さんの孫を迎えに駆け出した。 「走ったら危ないですよ、一太さん、遥香さん」 若い衆のみんなが、あたふたしながら慌ててふたりのあとを追い掛けて行った。 「2ヶ月まえに九州から転校してばかりだそうです。現在小学2年生です。学校側の説明によると、給食の時間にしか登校して来ないみたいで、どうしていいか対応に苦慮しているみたいでした。取り敢えずGw明けまで学校を休ませ、こちらで面倒をみるとお伝えしてきました」

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