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番外編 いつかこの思いが届きますように

奏音くんは、一太に連れていってもらったお風呂で紗智さんと那和さんと太惺と心望にバッタリ会い、目を真ん丸くして驚いていたみたいだった。 下に幼い弟と妹がいるとは思ってもいなかったみたい。 はじめは一太と柚原さんの声しか聞こえなかったけど、10分も過ぎると奏音くんの声も混じるようになり、3人で仲良くい~ち、に~い、さ~ん……と数を数えはじめた。 「よし、やれば出来るじゃないか」 何とか50まで数えることが出来たふたりを褒める柚原さんの声がいつもより弾んでいた。 これには彼や根岸さんが、「仕事を間違ったんじゃねぇか」そう言いながら苦笑いをしていた。 「髪も身体もちゃんと洗ったぞ。足の爪が伸び放題で危ないからついでに切っておいた。前髪もかがらしいって言ってたから少し切ってやったぞ。はじめっから上手く出来るヤツはいない。それに、怖いモノ、苦手がモノが3つ、4つあったっていいんだよ」 一太と奏音くんを椅子に座らせ、タオルで水分を取ると慣れた手付きで交互にドライヤーの温風を遠くからあてて乾かしはじめた。 奏音くんは暴れることもなく嫌がる素振りも見せず大人しく座っていた。 「根岸、悪いが奏音を皮膚科に連れていってくれ。乾燥して痒いみたいだ。腕と膝におそらく水いぼだと思うんだが小さい発疹がある。大きくなるとその分治療も大変になるし完治まで時間が掛かるから、なるべく早めに頼む」 「よく分からないが、分かった」 根岸さんは柚原さんの観察力に舌を巻いていた。 「よーしこれでOKだ。一太くん、奏音をままたんのところに連れていってくれ」 「わかった。かなたくん、ごはんたべにいこう」 「うん、いく」 ふたりして仲良く手を繋いで広間へと向かった。

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