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番外編 いつかこの思いが届きますように

「まるで親子みたいだな」 「子育てのベテランのままたんとぱぱたんだぞ。二人いれば鬼に金棒だ」 「だな」 彼と談笑する根岸さん。 「あの、オヤジ」 座り直すと背筋をぴんと伸ばした。 「奏音を引き取っても、ちゃんと育てるか自信がない。だから、その」 「施設に預ける気か?それは駄目だ。やっと孫と会えたんだぞ。なぁ、根岸、俺の子どもたちみたく、みんなで育てればいいんじゃないか?ままたんとぱぱたんにはなついているんだ。ふたりに協力してもらって、伊澤と一緒に奏音を育てればいいんだよ」 「オヤジ、すみません」 根岸さんが頭を下げた。 奏音くんがチラチラとしきりに何かを気にしていた。大皿にど~と山のように盛られた唐揚げがものすごいスピードであっという間になくなるのを見て、自分も食べたいのに。みんな待ってて。焦れば焦るほど箸が上手く握れなくて。しまいには手を伸ばし2、3個鷲掴みした。 「こら、奏音!手掴みは駄目だろう」 根岸さんの大きな声にびっくりして小さな身体を震わせ泣き出した。 「ネギ、オコル、ダメ」 亜優さんが奏音くんの側に這っていった。 「僕もここに来たときは箸を上手く持てなかったんだよ。だから、焦らなくても大丈夫。ままたん、奏音の分、ちゃんと別に取っといてくれてる」 柚原さんが同時に通訳してくれた。 「だからもう泣かなくていいんですよ」 橘さんと亜優さんが宥めてくれた。 「でも今のは奏音が悪いぞ。食べたかったらちゃんと言え。な、分かったか?」 「はい」 しゃくりあげながらも根岸さんにちゃんとごめんなさいが言えた奏音くんを柚原さんが偉いぞ、そう言って褒めてくれた。 「にいたんと、かなくんばっかずるい!」 橘さんたちが奏音くんに付きっきりで、全然構ってもらえなくて遥香が臍を曲げてしまった。 遥香だけじゃない。太惺も心望も下唇をこれでもかと伸ばし、テーブルにつまり立ちするとバンバンと両手を叩いて、構ってよ!そうアピールしていた。 「パパや紗智や那和がいるだろう。何でみんなして、ままたんとぱぱたんなのかな?」 これには彼もほとほと困り果て、手を焼いていた。

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