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番外編 いつかこの思いが届きますように
奏音くんは柚原さんの背中に隠れ紗智さんと那和さんを観察するかのようにじっーと見つめていた。
「ふたりは亜優の兄弟だ。自主学習と音読の宿題を見てもらったらいい」
奏音くんの担任の先生から、国語の教科書を毎日音読する。一行でもいいから漢字の練習をする。計算問題を一問でもいいからノートに書き写し勉強する。この3つを頼まれたみたい。
太惺は親指をしゃぶりながら柚原さんの袖をぎゅっと掴み、抱っこをせがんでいた。
柚原さんは両手に花。モテモテだ。
もちろん橘さんもモテモテだ。
遥香と心望が膝の上にちょこんと座ってデザートのままたん手作りのミルクプリンを美味しそうに頬張っていた。大好きなままたんを独占出来てふたりともご満悦だ。
ついさっきまで駄々を捏ねて、ぶすっとしていたのが嘘のようだ。
一太は……というと、ひとりぼっちになって、誰も寄ってこないパパが可哀想だからと、彼の隣にちょこんと座りデザートを食べていた。
「一太だけだ。パパって来てくれるのは」
「だっていちた、パパがだいすきだもの」
「嬉しいことを言ってくれるじゃねぇか」
目を潤ませながら一太の頭を撫でてくれた。
奏音くんがおっかなびっくり、顔色を伺うようにそぉーと紗智さんと那和さんの前に出た。
「ねぎしかなた」
「俺は鞠家紗智。奏音くん、宜しくね」
「僕は卯月那和だよ。紗智と亜優の弟だよ。宜しくね」
屈託のない笑顔で微笑むふたりに、警戒しガチガチに緊張していた奏音くんの表情が幾分か和らいだ。
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