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番外編いつかこの思いが届きますように

最初に気付いたのは伊澤さんだった。なぜかぷぷっと笑いを堪えていた。 奏音くんのもとに行こうとした柚原さんも、「ん?」ようやく気付き後ろを振り返った。 「たいくん、なんでいるんだ」 ハイハイで柚原さんにそぉーっ近付いていた太惺。スボンの裾を小さなお手手でぎゅっと握り締めると、 「ぱぱ、たー」 前歯を覗かせにこっと笑うと、よいしっと立っちした。 「たいくんを起こさないように抜け出したつもりだったんだが、見付かったか。ねんねしないとおっきくなれないぞ」 健気にもあとを追い掛けてきた太惺を嬉しそうに抱き上げてくれた。 「普通はパパって来ないか」 「子どもは素直だからな。パパは子どもたちよりもママに夢中だっていうのがちゃんと分かってるんだろう。だから、パパより構ってくれる、それに面倒をみてくれる橘や柚原のところに行くんだろうよ。まぁ、しょうがねぇよ」 奏音くんを膝の上に抱っこし、しょんぼりと肩を落とした彼を度会さんがよしよしと宥めていた。 「ぱぱたんも話しに混ざりたいんだよな……」 チラッと太惺の顔を見ると、つぶらな瞳をうるうると潤ませ柚原さんをじーと見つめ返した。 「おめめぱっちりだし、当分はねんねしそうもないし、どうしたらいいかな?あ、そうだ!おんぶ紐を持ってくればいいんだ。未知、悪いが少しだけたいくんを頼む。すぐに戻ってくるから」 柚原さんに太惺をぽんと渡された。 目が合うなりぶすっとされてしまった。 「たいくん、ママだよ。ママより橘さんや柚原さんの方がいいのは分かってるから頼むから泣かないでね」 彼や度会さんや根岸さんに苦笑いされながらも、今にも泣き出しそうな我が子にあたふたしていたら、おんぶ紐を手にした柚原さんが戻ってきた。

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