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番外編 いつかこの思いが届きますように
はじめは背中におんぶようとしていたけれど「心臓の音が聞こえる方が安心するよな」
ぼそぼそと呟くと前に抱っこしてくれた。
お尻をぽんぽんと優しく叩きながら、ゆらゆらと体を左右に揺する柚原さん。
彼や度会さん根岸さんとこれからどうするか話し合いを始めた。
奏音くんは親指をしゃぶりながら彼に抱っこされたままようやく寝てくれた。
橘さんが毛布を運んできてくれたけど、心望も太惺と同じで橘さんの後追いをしてなかなかねんねしなかったみたいで、抱っこ紐で同じように前で抱っこされていた。さすがは双子だ。
「ま~ま、たー」
「まま、たー」
帰宅した橘さんに奏音くんのことを相談していたら、太惺と心望がにこっと笑いながら広間に入ってきた。
「ふたりとも橘のストーカーだな」
「私や柚原さんの姿が見えないだけで大騒ぎです。必死に後を追い掛けてくる姿が健気で、遥琉の子どもだとは到底思えないくらいの可愛さです」
「もう少し可愛いげのある言い方が出来ないのか?」
「可愛いげがなくてすみませんね」
いつものように仲良く口喧嘩をはじめた。すると、
「お、どうした二人とも」
彼の服にぎゅっと掴まりながら立っちすると、橘さんをじーと見つめ、すっと静かに手を離した。
1、2、3……
わずか3秒だけだけど一人で立っちすることが出来た。
「すごいじゃないか。あんよまでもうちょいだな」
彼が頭を撫でると、
「なんで二人してぶすくれるんだよ。パパ泣くぞ」
「きっと顔が怖いんですよ」
「顔が怖いのは元々だ」
「そうでしたね。たいくん、ここちゃん、ままたんっておいで」
橘さんが両手を差し出すと、にこっと笑いながらその手を掴み、よいしょっと立っちした。
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