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番外編 いつかこの思いが届きますように

「俺よりしっかり者の橘がいるから大丈夫だ。それに若頭代行も子守りをしながら頑張ってくれているからな」 『ふたりは最強の夫婦だからな。まさに鬼に金棒だな』 「あぁ、その通りだ。紗智に代わるか?」 『いや、あとにする。昨夜も橘に頼んで紗智と話しをしていたら、大泣きされて大変だったんだ。オヤジ、紗智を頼む』 電話の相手は鞠家さんだった。 あと数日、情報を集めるだけ集めて帰る。そう言って電話が切れた。 「フロッピーディスクに入っていたデータは、楮山と古狸に瓜二つの与党大物議員との癒着を示す裏帳簿と、高額の金のやり取りを詳細に記載したものだった」 「資金洗浄が行われていたってことか。なるほどな」 広間で彼と度会さん柚原さんらが小難しい顔で膝を付き合わせ話し合っていた。 「ごめんなさい。盗み聞きするつもりじゃなかったの。橘さんに熱燗を持っていくように言われて」 お盆をぎゅっと握り締めた。 「誰もきみを咎めないよ。敷居に躓いて火傷をしたら大変だ。そこから動くなよ」 彼が飛んできてくれた。 「あの遥琉さん、資金洗浄って?」 「マネーロンダリングともいう。規制薬物取引、盗品などの贓物取引、身代金、詐欺、違法賭博、脱税、粉飾決算、裏金、偽札などの犯罪行為によって得た汚い金の汚れを洗い流して、綺麗な金に見せかけることだ。未知には少し難しいな」 「うん」 説明されても全然分からなかった。 「楮山と上田は鳥飼の舎弟にしか過ぎなかった。汚い金を綺麗にしてばら撒き今の地位を得た。その方が分かるか?」 「うん。なんとなくだけど。ねぇ遥琉さん」 意を決して聞いてみた。 「根岸の倅を楮山組より先に見付け保護するためだ。今はチカと国井と長谷川を信じるしかない」 根岸さんの息子さんは殺人未遂並び、違法薬物所持、使用の疑いで全国に指名手配された。

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