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番外編 ハルちゃんと奏音くん
「アイツは無事だ」
彼の声が頭上から聞こえてきて。
どきっとして顔を上げたら腕を前で組み仁王立ちしている彼と目が合った。
「本人の希望で未知には内緒にしていたんだが、未知は?ワンは?元気か?って3日に一回は電話を掛けて寄越すからおそらく大丈夫だ。心配すんな」
手が伸びてきて。髪をそっと撫でてくれた。
「古狸はずる賢くて悪知恵に長けている。下手に動いたら足を掬われる。マトリとソタイは必ず動く。それまでの辛抱だ」
「夫婦でまたバディが組める。乾さんも国井さんも張り切っています」
買い物袋を下げた橘さんが居間に入ってきた。
「ままたん、おかえりなさい」
奏音くんがいないことを念入りに確認してから、遥香が満面の笑みを浮かべ大好きなままたんの胸元へと飛び込んでいった。
「ただいまハルちゃん。たいくんとここちゃんのお世話とお留守番ご苦労様でした。お土産ありますよ」
遥香に抱き付かれ身動きが取れない橘さんから買い物袋を受け取った紗智さんと那和さんが中を覗き込んだ。
太惺と心望はカシャカシャというレジ袋の音に興味を示したみたいで、テーブルに掴まり立ちし、ちょうだいと言わんばかりに片方の手を懸命に伸ばした。
「ちょっと待ってね」
紗智さんと那和さんが急いで中身を取り出しテーブルの上に並べた。
「レジ袋がもう一枚入ってます。窒息の恐れがありますので、頭から被らないようにちゃんと注意して見ててくださいね」
本当は甘えたいのに。お姉ちゃんだからと我慢している遥香。
だからなかなか橘さんから離れようとはしなかった。
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