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番外編 ハルちゃんと奏音くん
『遥琉に用はないの。未知いる?』
『未~~知!』
「頼むからふたりいっぺんに喋らないでくれ。お前らの甲高い声を聞いていると頭がズキズキ痛むんだ」
『えぇ~~!何それ~~!』
『言い方酷くない』
千里さんとチカちゃんの声はよく通る。だからどこにいてもすぐにふたりだと分かる。
「千里さん、チカちゃんと一緒なんだ」
『真面目を絵に描いたようなチカのダンナ様付きだから、肩が凝っちゃって、たいへ~ん』
千里でも気を遣う相手がいるとはな。ぼそっと彼が隣で呟いた。
『いま、悪口を言われたような……何か言った?』
「ううん、なにも言ってません」
慌てて首を横に振った。
『未知、どう体調は?』
「お腹が張って立っているのもしんどいし、夜は夜でなかなか寝れなくて……日中居眠りばかりしてて、自分のことで精一杯で、子どもたちの世話まで手が回らなくて。彼や橘さんや柚原さんたちに申し訳なくて」
『お兄ちゃんも柚原もそんなの苦にしてないわよ。みんな、パパに似ず、素直で可愛くて、ままたんぱぱたんって慕って呼んでくれるんだもの。それにちびちゃんたちも、まま、たーと、ぱぱ、たーだっけ?アタシだってそう呼ばれたらもうキュンキュンよ。面倒みる気もアップしちゃうわよ。チカが代わって催促してるから代わるわね』
はい、小さく頷いた。
『手短に話すわね。明日の早朝7時。与党議員の関係先にソタイとマトリが一斉に強制捜査が入るわ。梶山組がなにをしでかすか分からないから、なにかあったらすぐにおっきい子たちと、ちびちゃんたちを連れて逃げるのよ。いい、分かった?』
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