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番外編 ハルちゃんと奏音くん

「明日が土曜日なのが救いだな」 「うん。小学校と幼稚園が休みだから良かった」 「休日返上で随分と仕事熱心だな」 アイスを夢中で食べる子どもたちを眺めながら彼とそんな会話をしていたら、 「古狸に瓜二つの与党議員……林とかいう名前だったような記憶があるんですが、明日、県外の病院に転院するんです。捜査の手が及んでいることくらいバカでも分かりますからね」 お盆になにかを乗せ橘さんが居間に入ってきた。 「たいくん、ここちゃんお待たせしました。おやつですよ。紗智さんと那和さんもアイスを食べてください」 ふたりに抱っこされ、お兄ちゃんたちが美味しそうに食べる様子を指をくわえて見ているしかなかった太惺と心望。 橘さんが急いで作ってくれたのは人参とコーンの蒸しパンだった。ほのかに香る甘い匂いに一太と遥香、そして奏音くんまで身を乗り出して覗き込んでいた。 「たくさんありますから食べてもいいですよ」 「しかしまぁ、スゲエな。昨日はミニピザまんだろ?その前は豆腐のチーズケーキだろ?どんどん料理の腕が上がってねぇか?」 「気のせいですよ」 素っ気なく答えると太惺と心望の世話をしながらおやつを食べさせてくれた。 「お前は相変わらず神出鬼没なヤツだ。来るなら来るって一言言えばいいんだ。なにを今さら恥ずかしがっているんだ。ほら、こっちさ来い」 柚原さんが遅れてやって来た。 一人じゃない。腕をむんずと掴まえて強引に連れてきたのは…… 「なんで……」 思わず息を飲んだ。 子どもたちもすぐに気付いて。 「おかえりなさい!いっしょにたべよう」 「おかえり。ハルちゃんのとなりにすわる?」 ニコニコと笑いながら話し掛けた。

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