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番外編 ハルちゃんと奏音くん
「まさに嵐の前の静けさだな」
「あぁ」
彼と地竜さんが縁側に並んで座り、熱いお茶を飲みながら星が瞬く藍色の空を眺めていた。
「遥琉さん、地竜さん」
恋敵同士積もる話しもあるでしょうからそっとしておけばいいんですよ。橘さんにそう言われたけど。
ふたりが風邪をひかないように肩にそれぞれ厚地のタオルケットを掛けた。
「お、ありがとうな」
「シェ シェ」
「中で話せばいいのに」
「幹部や舎弟たちがそれこそ寝ずの番で警備しているんだ。俺たちも寝る訳にはいかない。子どもたちは寝たのか?」
「うん。でも、たいくんとここちゃんはぐずってなかなか寝なくて」
「寝かし付けのプロがふたりもいるんだ。任せておけばいい。未知もお茶を飲むか?」
彼が湯のみ茶碗に急須のお茶を注いでくれた。
「体が冷えると母体に良くない」
地竜さんがタオルケットを掴んだ。
「一杯だけ飲んだら大人しく寝ます。だから、大丈夫です。ありがとう地竜さん」
地竜さんの手が伸びてきて。
ブレスレットを指先でそっと撫でられた。
「外しているとばかり思っていたから、こうして付けていてくれて嬉しいよ。俺の方こそありがとう」
瞳を覗き込まれにこっと微笑まれた。
すると彼にわざとらしく咳払いをされてしまった。
「ごめんなさい。やっぱり寝ます」
湯のみ茶碗を両手で持ちながら立ち上がると、遠くからサイレンの音が聞こえてきた。
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