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番外編 ハルちゃんと奏音くん

「そういえばワンの姿が見えないが」 「根岸と伊澤ら幹部と組事務所にいる。地竜、ワンは俺たちの子どもになったんだ。これからは亜優って呼んでやってくれ」 「あゆ?どういう字だ?」 「亜細亜《アジア》の【亜】に、【優】はお前のもうひとつの名前からもらった」 「そうか。新しい名前をもらってワンは果報者だな。良かった。いたずらばかりして手に余るから連れて帰れ。そう言われると思っていたんだ」 「誰がなんと言おうと亜優は俺の息子だ。なにがあっても手離さない。紫竜《ズーノン》や芫、もうひとりの芫とダオレンにも絶対に渡さない。俺やみんなで亜優を守るから安心しろ」 芫さんの名前が出て、地竜さんが申し訳なさそうに項垂れた。 「すまなかった。謝っても許されることじゃないな」 「どうせすぐに用済みになって捨てられる。スペアには綺麗な水より泥水がお似合いだ。所詮は能無しの疫病神。クスリでラリっていたとはいえ絶対に言ってはいけない言葉だ。本物の芫は本気で弓削に惚れていた。それだけが救いだ。そういえば炎竜は?」 「支援者のつてを辿り安全な場所で弓削同様薬物中毒から脱すために闘っている」 「そうか」 彼がお茶をゆっくりと飲み夜空を仰ぎ見た。

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