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番外編 ハルちゃんと奏音くん
『以上で周 先生の記者会見を終了します』
司会者の女性の声にはっと息を飲む奏音くん。もう少しで出来上がる鶴をテーブルの上に放り投げると、ばこばこと這っていって目を見開きパソコンの画面を食い入るように見つめた。
「どうした奏音?」
「いちたくんパパ、これとってある?もどせる?もういっかいみせて。こえ、ききたいの」
「何だかよく分からないが、橘、もう一回見せてやってくれ」
「分かりました。奏音くん、私の膝の上に座ってください」
言われた通り橘さんの膝に座ろうとしたら、
「ここちゃん、はやいね」
いつの間にか心望がちょこんと座っていた。してやったりと言わんばかりに、にこにこと笑っていた。
記者会見は駅ビルにある市民プラザで行う。司会進行役は地元のテレビ局のアナウンサーが務めると聞いているが詳しくはわからない。用心に越したことはないからと、防弾チョッキを中に着てからスーツを颯爽と羽織り、内ポケットには護身用のナイフをそっと忍ばせた。
「ままたん、すとっぷ。とめて!」
「奏音もついに橘をままたんって呼ぶようになったか。もしかして父親の知り合いか?」
「……」
「奏音?」
手をぎゅっと握り締めると、
「ちがう、しらないひと」
唇を噛み締めぶんぶんと首を横に振った。
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