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番外編 ハルちゃんと奏音くん

「この女、古狸の私設秘書でこれだ」 ふらっと現れた鳥飼さんが小指を立てた。 「この映像では分かりにくいが右の耳の下に小さな痣がある。それと首の付け根に3つ黒子が並んである」 鳥飼さんが動画の女性を睨み付け、淡々と言葉を続けた。 「楮山の愛人だった。俺も一度だけこの女に寝首をとられそうになった。梶山は組を立ち上げたあとダンベイの古狸にこの女を献上した」 「やけに詳しいな」 「それはその……」 彼の言葉にごほんとわざとらしく咳払いをすると顔を真っ赤にし、フーさんの顔色を伺うようにちらっと見た。 「内腿に残る小さな火傷のあと。この女性に煙草の火を押し付けられたんでしょう」 「そんなの初めて聞いたぞ」 「私はフーさん、ウーさんのお悩み相談受付担当ですからね。フーさんはずっと悩んでいたんですよ。鳥飼さんはそっちの趣味があるのか。自分以外にも男がいるのかって。良かったですね。悩み事がひとつ解決して」 「橘待て!子どもたちの前だから、頼むから口を慎んでくれ」 「お口チャックですか?」 「当たり前だ」 鳥飼さんが彼に女性の整形前の写真を渡した。 「安井カオルに目の辺りがよく似てる。昔はさほど気にもならなかった」

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