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番外編 ハルちゃんと奏音くん
「ほくろ、みっつ。くびのところ」
奏音くんが親指と小指を軽く重ねると残りの指を立てた。
「地竜に女に気を付けろ。飯に誘われても絶対に応じるなって連絡を入れないとな」
「遥琉、地竜さんは未知さん以外の女性は眼中にありませんよ。それにこのあと、福島市で講演会を行い、仙台市に向かわないといけませんからね。スケジュールは分刻みのはずです。女性に構っている暇などないはずです」
「たとえ取り越し苦労になっても用心することに越したことはない」
彼がスマホを取り出そうと上着の内ポケットに手を入れようとしたら、
「地竜には俺の方から連絡しておきました。オヤジ、出過ぎた真似をしてすみません」
鳥飼さんが頭を下げた。
「急を要することだ。連絡する手間が省けた。ありがとう」
フーさんが面白くなさそうに眉を潜めると柚原さんの袖を強く引っ張った。
「まさか鳥飼と地竜の仲を疑ってるのか?な訳あるか。絶対にない。断言出来る」
慌てて中国語に訳した。
「✕○△✕!」
「さっきも言ったが鳥飼にSMの趣味はないし、当然、浮気も100%してない。フー、カミさんを信じてやれ」
誰よりも鳥飼さんのことを愛しているからこそ疑心暗鬼になるのも無理ない。
「あのねフーさん。ディノンさんはママがだいすきなんだよ」
いつの間にか折り紙をハートの形に折っていた一太がフーさんにそれを渡した。
右にディノンさん。左にとりしゃんと鉛筆で書いて。
「相合い傘ですか。なかなか粋なことをしますね」
橘さんがくすっと笑った。
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