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番外編 ハルちゃんと奏音くん

「アリガト、イチタサン」 さっきまで散々焼きもちを妬いてブスくれていたフーさんの表情がふっと緩んだ。 「連中は根岸の息子だと知った上で奏音の父親に近付いた」 「子をやめたと一方が言っても親子の縁はそう容易く切れるものではありませんからね」 心望の頭を優しく撫でながら橘さんが言葉を返した。 「そうなると根岸の息子の命も危ないな」 「そうですね。甲崎さんらも懸命に探しているみたいですけど手掛かりすら掴めないようですし」 ちらっと彼がスマホの画面に目を落とした。 「もう少しで10時か」 チカちゃんと国井さんからはいまだ連絡がない。 「ハルちゃん、おなかすいた。たいくんもここちゃんもおなかすいたよね?」 遥香が右手を上げると、お姉ちゃんの真似っこが大好きなふたりも、両方のお手手を上げバンザイをした。 「ドーナツ、揚げるだけになっているんです。遥琉、ここちゃんをお願いします」 「俺?」 「あと誰がいるんですか」 彼の膝の上に座らせると、心望が思いっきり下唇を伸ばし離れていく橘さんの手をぎゅっーと掴んだ。 「すぐに戻ってくるので、パパといてくださいね」 「まま、たー」 目に涙を浮かべ瞳をうるうるさせて橘さんをじっーーと見詰めた。 「もう仕方がないですね。紗智さんか那和さん手伝ってもらっても大丈夫ですか?」 「はい」 ふたりが同時に手を挙げた。 「なんでパパじゃだめなんだ。ここちゃん、パパも泣くぞ」 彼までが泣きそうになっていた。

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