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番外編 ハルちゃんと奏音くん

紗智さんに心望を抱っこしてあやしてもらっているうちに橘さんと紫さんと那和さんとで手分けしてこれまた大量のドーナツがど~んとお皿に盛られていった。 さすが手際がいい。あっという間だ。甘い匂いに誘われて子どもたちが集まってきた。 奏音くんは爪先立ちになりテーブルに噛り付くようにじーとドーナツの山を眺めていた。 「あらあらよだれが出てるわよ」 紫さんが割烹着の裾で奏音くんの口元をそっと拭いてあげた。 「たべたこと、あんまない」 「え?」 紫さんが一瞬驚いたように目を見開いた。 「味見してみる?ままたんの手作りドーナツ美味しいわよ」 「いいの?」 「えぇ」 「かなくんだけずるい!」 遥香が頬っぺたをこれでもかと膨らませた。 「ハルちゃんも味見どうぞ」 「やったーー!」 ぴょんぴょんと元気いっぱいに飛び跳ね大喜びしていた。 そのあと一太もまざり、三人仲良く並んで椅子に座り足をぶらぶらさせながらドーナツを美味しそうに頬張った。 居間にドーナツを持っていったら、彼や柚原さんたちが小難しい顔で腕を組んでパソコンの前に座っていた。 「遥琉さん、どうしたの?」 「いまだに証拠となるブツが見付からずかなり苦戦を強いられているようだ」 「未知なら大事なものをどこにしまう」 「いきなり聞かれても困るよ。えっと今考えるから待ってね」 ドーナツがてんこ盛りになっているお皿をテーブルの上に置いてから、ぐるりと辺りを見回した。 「クスリを溶かして固めて紙にする。とかは?あり得ないか」 子どもたちが一生懸命折った鶴にふと目が止まった。画用紙なら選挙事務所にだってあるはずだもの。

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