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番外編 真実

川の字で仲良く眠る子どもたちのあどけない寝顔を眺めていた紗智さんと那和さん。 「奏音くん風邪ひくよ」 暑くて足元まで蹴飛ばした布団を掛け直すと、髪を梳かすようにそぉーと撫でた。 「橘、激おこぷんぷんだったからなにかあるなっては思っていたけど、そうだったんだ」 「橘さんが怒るのも無理ないよ」 「紗智、まだ帰ってこないの?」 「うん。電話したら地竜と一緒だって。仙台から新潟へ移動中だって言ってた。明日帰るって」 「そうなんだ。なかなかハードスケジュールじゃない」 「身体……壊さないといいけど……」 顔が悲しげに曇った。 林代議士の選挙事務所の状差しにあった和紙の葉書から検出されたドラックの成分と、お守りに仕込まれていたドラックの成分が一致したとチカちゃんから連絡があったのは日付けが変わってからだった。林代議士は依然として消息不明。公設秘書は知らないの一点張りで、捜査がまったく進展していないみたいだった。 翌朝、まだ夜が明けきらぬうちに根岸さんがこっそりと現れて。奏音くんを起こさないように座ると暫くの間無言で寝顔を眺めたのち、いつの間にか奏音くんの添い寝担当になっている柚原さんにすまん。短く言うと頭を深々と下げ、すっと立ち上がった。 「亜優と奏音のことは任せておけ」 横臥したまま柚原さんがぼそりと呟いた。てっきり寝ているものだと思っていた根岸さん。少し驚いてはいたもののにこっと柔らかく笑むと息子さんの手掛かりを掴むため伊澤さんと栃木へと旅立った。

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