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番外編 キラキラの笑顔

「カルチャーパークの駐車場の隣に農協の直売所がオープンしたから、イベントか何かしているんじゃないのか。心配し過ぎだ」 「だといいんですけど」 橘さんの表情は依然として曇ったままだ。 ジェットコースターの前に屋根付きの広い休憩スペースがあって、そこでお昼を食べることにした。 橘さんの何がすごいって。 毎日三食。大所帯の菱沼組のみんなのご飯を一手に引き受け、時短レシピと激安食材をフル活用してあっという間に作ってしまうこと。 離乳食もなるべく手作りを心掛け、お弁当もお手のものだ。 奏音くんの好きな食べ物、食べたいもの、嫌いなものはすべてメモ帳に書いて把握しているからさすがだ。 「ヤス、そこから気球が見えるだろう?もし何かあったらすぐに連絡を寄越せ」 橘さんの嫌な予感は的中率が高い。 駐車場で待機しているヤスさんに電話を掛け、警戒するように伝えた。 「オヤジ、ウーと様子を見てきます」 柚原さんがすっと立ち上がった。 「奏音の側にいてやれ。お前がいなくなったら間違いなくギャン泣きされる。誰があやすんだ?」 柚原さんが何気に視線を感じて下を見ると、お弁当箱を大事そうに抱えた奏音くんが、瞬きもせずじぃーと見つめていた。

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