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番外編 キラキラの笑顔
「現場はガスの匂いが充満している。ただ墜落したのが用水路の近くで回りは田んぼしかないから、ある意味不幸中の幸いだったのかも知れない」
紗智さんがしきりに辺りを気にしてキョロキョロと見回していた。
「鞠家は駐車場にいる。安全な場所にいるから心配するな。蜂谷が一緒だから大丈夫だ」
「本当に?本当に大丈夫なの?そう言い切れる?」
紗智さんが地竜さんの胸に掴み掛かろうとした。
「紗智、まずは落ち着け」
がしっと手首を掴み彼が寸でのところで止めた。
「バーバ離して」
「落ち着けって言ってるのが聞こえないか?」
手を振りほどこうと必死にもがく紗智さんに対し彼が語気を強めた。
「相手は黒竜だ。大陸の連中は気性が荒い。目的を果たすためなら手段は選ばない。そのことは紗智、君が一番分かっていることだろう」
「バーバ」
ハッとしたように息を詰める紗智さん。正気を取り戻したみたいだった。
「まずは飯を食え。それからどうするかみんなで考えよう」
「バーバ分かった。地竜もごめん」
「お前の気持ちは痛いくらい分かる。頭をあげろ」
地竜さんも優しく声を掛けた。
「なぁ卯月、俺の分ってある?昨日からなにも食べていないんだ」
「自分で飯くらいなんとかしろ」
「は?それ酷くないか?」
「なら来るなら来るって電話を寄越せ」
「昨日、明日帰るって言ったはずだ」
彼と地竜さんがまた仲良く口喧嘩をはじめた。
「まったくもう。パパもディノンさんもこどもなんだから。いちたのあげるからけんかしないの。ディノンさん、ままたんがつくってくれたおにぎり、すっごくおいしいよ。いっしょにたべよう」
一太がニコニコと笑いながら地竜さんにおにぎりを差し出した。
「一太くんの方がどっかの誰かさんより大人ですね」
「五月蝿いな」
橘さんに痛いところをつかれ反論すら出来なかった。
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