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番外編 キラキラの笑顔
「ねぇ遥琉さん、ウーさん」
「たく、あんだけ睨みきかせら他の客がビビっちまうじゃねぇか」
地竜さんにぴたりと張り付くひとりの男性をウーさんはずっと睨むように見つめていた。やせ形ですらりとした長身で。一見するとどこにでもいるような若者に見えるけど、鋭い眼光で周囲をじろじろと見ていた。
彼がそうならもうひとりいるはず。
キョロキョロと辺りを見回したけど、それらしきひとは見当たらなかった。
「いいか一太。ディノンさんじゃないぞ。スーチーさんだぞ」
「なんで?」
いまいち理解出来ずきょとんとする一太に、
「大人になるとまぁ色々と事情があるんだ。一太にはちと難しいな」
「うん。ぜんぜんわかんない」
「だよな」
ニコニコの笑顔で即答され、彼が困ったように苦笑いしていた。
「ディ……じゃない。えっとぉ……そうだ!スーさんだ!スーさん」
一太が手を一生懸命振った。
まさか来るとは思ってもみなかったのだろう。地竜さんは目を丸くしてかなり驚いていた。
「い……」
「周(ヂョウ)!」
名前を口に出そうとしたら、ぴたりと張り付いていた男が声を荒げた。
「温かい日本の皆様のご支援、一生忘れません」
すぐに表情を引き締め何事もなかったようにマイクを握ると、集まった観衆ににこやかな笑顔で手を振っていた。
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